9.3 十戒
第五条
「あなたの父と母を敬え。これは、あなたの神、主が賜わる地で、あなたが長く生きるためである(出エジプト記20の12)」
親は、ほかのだれも受けることのできない愛情と尊敬を資格がある。
神は、お与えになった子供たちの責任を親に負わせられた。
そして、子供たちが幼いころは、親が子供たちに対して、神の立場に立つことを神ご自身が定められた。
親の正当な権威を拒む者は、神の権威を拒んでいる。
第五条は、子供たちが親を尊敬し、親に従順に従うことを要求しているだけでなく、
親を愛し、いたわり、重荷を軽くし、その評判をまもり、老齢の彼らの助け、慰めることを要求している。
それは、また、牧師、統治者その他神が権威をおゆだねになったすべての人を尊敬するように命じている。
「これが第一の戒めであって、次の約束がそれについている」と、使徒パウロは言っている(エペソ6の2)
まもなくカナンにはいることを予期していたイスラエルにとって、
これは、従順な者にとって、その美しい国で長く生活する保証であった。
しかしこれにはもっと広い意味と、神のすべてのイスラエルが含まれていて、
地が罪ののろいから開放されたときの永遠の生活が約束されているのである。
第六条
「あなたは殺してはならない(出エジプト記20の13)」
命を縮めるすべての不正行為、憎しみと復讐の精神、また、他の傷つける行為を行わせたり、
他が傷つくことを望んだりさせる悪感情を心にいだくこと、(なぜなら、すべて兄弟を憎しむ者は人殺しである)
利己的精神をいだいて、貧者や苦しむ者を顧みないこと、健康を害するすべての放縦、また不必要な消耗、過労に陥ることは、
程度の差こそはあっても、すべて第六条違反である。
第七条
「あなたは姦淫してはならない(出エジプト記20の14)」
この戒めは、不純な行為だけでなく、好色的な思いや欲望、あるいは、そうしたものを刺激する行為を禁止している。
外にあらわれた生活だけでなく、ひそかな意図や心の感情においても、純潔が要求される。
キリストは神の律法について深遠な義務をお教えになり、邪悪な思いや目つきは、
不法な行為と全く同様に罪であると言われた。
第八条
「あなたは盗んではならない(出エジプト記20の15)」
この禁止には、公私の罪が含まれている。
第八条は、人間をさらったり、奴隷売買をしたりすることを有罪とし、征服のための戦争を禁じている。
それは窃盗と強盗を有罪としている。
それは日常生活のどんな小さいことがらにも厳密な正直さを要求している。
それは商売における不正を禁じ、正当な借金や賃金の支払いを要求している。
それは、他人の無知、弱点、不幸につけこんで私腹をこやす行為は、
すべて天の書に詐欺として記録されることを宣言している。
第九条
「あなたは隣人について、偽証してはならない(出エジプト記20の16)」
どんなことにおいても、偽りをいうこと、隣人を欺こうとするすべての試みや意図が、ここに含まれている。
欺こうとする意図が虚偽となりうるのである。
目つき、手の動き、顔の表情によって、ことばと同じように効果的にうそが語られているかもしれない。
わざと誇張されたしゃべり方、まちがった印象あるいは誇張された印象を伝えるように計画された暗示をほのめかし、
事実であっても誤解を招くような言い方などはすべて虚偽である。
この戒めは、虚偽や悪意のある推測や中傷、告げ口などによって隣人の評判を傷つける行為をすべて禁じている。
事実を故意に隠して、その結果他人に害を及ぼすことは、第九条の違反である。
第十条
「あなたは隣人の家をむさぼってはならない。隣人の妻、しもべ、はしため、牛、ろば、
またすべて隣人のものをむさぼってはならない(出エジプト記20の12)」
第十条は、あらゆる罪の根絶をはかるもので、罪の行為が生じる根源の利己的欲望を禁じている。
神の律法に従って、他人の所有に対してよこしまな欲望をいだかないものは、
同胞にたいして悪い行為を犯すことはしないであろう